英国外交官夫人の昭和初期の日本人評

2021年3月7日

「東京に暮す」1928~1936,
キャサリン・サムソン著の「日本人とイギリス人」という章の一部から

キャサリン・サムソン夫人は1883年イギリス生まれで、外交官の夫と1928年(昭和三年)から39年9月(昭和14年)まで東京で暮しました。その間日本の社会、文化、慣習の研究にも精を出し、日本人と一緒のバスに乗り、わざわざ二等の列車に乗り、旅先では日本人と一緒に温泉に浸かり盆踊りの輪に加わったりしています。以下抜粋引用です。

私たちは日本では、イギリス人のAさん、イギリス人のBさんというように大勢の外国人の中の一人として扱われ、概して好意をもって迎えられます。
ところがイギリスでは、アジアについて何らかの知識を持っている人の大半が、アジアの民族は支配されるべきものだと考えています。ビルマ、香港、上海、セイロン(スリランカ)、マレーシアに住んだことのある人が、日本で快適な暮しをしたいと思ったら、それまでの態度や行動様式を改める必要があります。植民地の統治者であることと、政府がその国の人民によって非常に見事に機能している国に外国人として暮らすこととはまったく別のことです・・・

特に優秀な人は別として、イギリス人は謙虚さを好み、理想とします。従って自慢とか、謙虚さの無い知識のひけらかしを嫌い、そういう人たちを信用しません。この傾向は日本人になるともっと強くなります。だから自慢したり威張ったりする日本人に会うと、私たちの方が驚いてしまいます。
日本人は非常に謙虚な国民で、慎み深い振舞いや言葉遣いがすっかり身についています。彼らも他の国民のように誇り高いのですが、自慢することを嫌います。日本人としての誇りを持ち、かつ外国人から学ぼうという謙虚な姿勢のために、日本は今日の世界の中で重要な位置を占めるようになったのです。・・・
しかし、もっと重要なのは、両国が非常に古い歴史を持つ国であるということです。引用終わり。

この中で「イギリス人はアジアの民族は支配されるべきものだと考えている」との記述がありますが、これがまだ90年程度以前の、欧米一般の考えだったこと、ソ連は満州の権益と中国の共産化を目していたことから、国際連盟で人種平等を唱える日本は、白人たちの植民地権益や覇権の障害と考えられたことも判ります。 先の大戦の大きな一因でしよう。