日本人は世界で最も親切で礼儀正しい民族
植物学者ハンス・モーリッシュの
「大正日本観察記」より:
著者のハンス・モーリッシュ(1856~1937)は世界的によく知られたオーストリア帝国出身のドイツ人植物学者です。
1922年9月から25年3月まで、東北帝国大学の招聘に応じて仙台に赴任し、当時新設されたばかりの生物学教室で植物生理学及び解剖学を講義しました。有名な植物学者、牧野富太郎や細菌学の北里柴三郎博士などとの出会いも書かれていたり、一般的日本人の日常の観察が大変興味深い書物です。抜粋して引用します。
【日本人の礼儀正しさについて】
国や人々について、ほんのつかの間の印象しか持ち帰れない世界漫遊者たちは、かたよった、あるいは大げさな見方で日本について語り、極端に賛美するか、あるいは何でもかんでも片端からこきおろすかしているが、それらはかならずしも日本について真実を伝えているとはいえない。しかし次の点についてだけは、日本を知る者もあまりよく知らない者も、一人残らずみな意見が一致する。すなわち、日本人は世界でもっとも親切で礼儀正しい民族であるという印象である。
[贈り物]
いかにして贈り物を相手に渡すかという、その渡し方の中にみごとに洗練された手際が映し出される。・・・
たとえそれがどんなに立派で高価な品であろうと、つまらないものをお渡しする無礼をお許しくださいと言ってわびるのがふつうなのである。小奇麗に包装することにかけても、日本人は正真正銘の名人である。・・・水引と呼ばれる赤と白半々の結び紐でくるめるのである。包みの右側には、先のとがった熨斗と呼ばれる紙片がつけられ、さらに贈り物がたいしたものでないことをそれとなく伝えるために、上半分に「粗品」と書き入れるのである。
[使用人への思いやり]
日本人が大変やさしい性格の持ち主であることは、使用人の扱い方を見てもなるほどと合点がゆく。・・・使用人に対してたいへん物静かに忍耐をもって接し、相手の立場を思いやっているさまを見て脱帽してしまうことさえ珍しくなかったのである。
[手紙]
日本人は手紙を書くとき、何よりもまずていねいさを心がけ、相手に対する細やかな心配りを忘れない。・・・
日本人のていねいさは言葉づかいにもあらわれる。日本人は三通りの話し方をする。すなわち、目下の者に対して、同等の者に対して、そして目上の者に対してそれぞれ言葉を使い分けるのである。このことで、日本語を習得するのがますます困難になる。・・・ 引用終わり
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